副院長の米澤です。
新型コロナウイルス流行の第8波ですが、ようやくピークを過ぎてきたようです。
政府からも、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が今年の5月8日に、
これまでの2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に変更されると発表されました。
3年前に流行し始めた新型コロナウイルスは、いよいよwithコロナの時代に突入し、
最低限の感染対策(手洗い、うがい)は引き続き必要なものの、
以前のようなマスクなしの日常生活を取り戻せるようになると考えています。
さて、本日は、以前にもお伝えしたことのある
「細菌」と「ウイルス」の違いについてです。
そもそも、世間を騒がせてきた新型コロナウイルスや今シーズンに久しぶりに流行したインフルエンザウイルスは
文字通りウイルスであり、細菌ではありません。
ですから、菌をやっつける抗菌薬、すなわち抗生物質は効果がありません。
それでは、細菌とウイルスの違いについてもう少し詳しく説明していきましょう。
細菌もウイルスも目に見えない非常に小さな微生物ですが、
人間に感染して病原性を示す細菌は実はひと握りで、人間にとって有益な細菌は多く存在します。
乳酸菌や納豆菌などを食品として積極的に摂取することからも分かりますね。
なので、健康のためにせっかく摂取した乳酸菌が不適切な抗菌薬(抗生物質)の投与でやられてしまうと本末転倒というわけです。
人間にとっての一般的な細菌感染症としては、
溶連菌感染症、尿路感染症、細菌性食中毒、淋病、結核などがあり、
その治療はターゲットとなる細菌に効く抗菌薬(抗生物質)が中心となります。
一方、ウイルスは細菌と異なり細胞では構成されていないため、
人間や動物に感染して初めて成長、増殖し、その多くは何らかの病原性をもちます。
一部の特殊な治療を除いて、基本的には人間が積極的に摂取すべきウイルスは存在しません。
人間にとっての一般的なウイルス感染症としては、
帯状疱疹、ウイルス性胃腸炎、水ぼうそう、はしか、おたふくかぜ、HIVなどがあり、
インフルエンザ、新型コロナウイルスもそのひとつです。
治療としては、帯状疱疹、インフルエンザ、新型コロナウイルスなどの抗ウイルス薬が存在しますが、
あくまでウイルスの増殖を防ぐのが目的であり、基本的には対症療法が中心となります。
すなわち、解熱剤、痛み止め、せき止めなどを用いながら、水分摂取、安静を指示します。
急性上気道炎(いわゆる、鼻かぜ、喉かぜ)の90%はウイルスが原因で、
抗ウイルス薬は存在せず、細菌ではないので抗菌薬(抗生物質)も無効です。
ただし、二次的な細菌感染症(副鼻腔炎、中耳炎、肺炎など)が疑われた場合には
抗菌薬(抗生物質)を投与することもあります。
もちろん、ウイルス感染症の予防として、ワクチン接種は非常に有効であることが分かっており、
新型コロナウイルスに対するワクチン接種についても、多くの方が受けられたのではないでしょうか。
このように、細菌感染症と鼻かぜ、喉かぜに代表されるウイルス感染症の治療は全く異なるのです。
以上、「細菌」と「ウイルス」の違いについてでした。
細菌感染症、ウイルス感染症の診断・治療については、われわれ耳鼻科医が得意とする
領域のひとつです。何かご不明なことなどあれば、いつでも相談して下さいね。