寝ているときに汗をよくかくと悩んでいる方がいらっしゃいます。部屋の温度や厚着が原因の場合は別として、寝汗をかく原因についてご説明します。
※寝汗は、水分の取りすぎ、アルコールの飲みすぎ、肥満が原因で発汗していることもあります。
考えられる原因・疾患について
睡眠時無呼吸症候群
寝汗をよくかく原因として睡眠の質から考えられるのが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時に無呼吸状態を繰り返す病気です。医学上は10秒以上の気流停止を無呼吸といい、一晩(7時間)の睡眠中に30回以上無呼吸が認められる場合、あるいは1時間に5回以上無呼吸がある場合に睡眠時無呼吸症候群としています。
睡眠中の出来事であるため自分で気がつくことは稀で、潜在患者数は300万人もいると推計されています。21世紀の国民病といわれることもあります。治療法が確立されているため、適切に検査・治療を行えば決して恐い病気ではありませんが、放っておくと高血圧や心臓循環障害、脳血管障害などにつながるリスクがあります。
当院でも寝汗をよくかく症状に悩まされている患者様の相談をお受けした場合には、問診を行い、自宅でできる簡易検査を実施して、睡眠時無呼吸症候群の診断を実施しております。
簡易検査について >>
睡眠時無呼吸症候群の治療について >>
その他の疾患や薬剤
寝汗の原因が何らかの疾患である場合もあります。
内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、膠原病など)が考えられる場合があります。また、悪性腫瘍(がん)、感染症などが原因の場合もあり得ます
また、薬剤としては、抗うつ薬、解熱鎮痛薬、糖尿病治療薬、などが原因となる場合があります。
こういった場合では、寝汗以外の症状を伴うことが多く、問診や検査の結果から原因を特定していく必要があります。精密検査が必要な場合は、当院では専門医療機関をご紹介しています。
過度なストレス
過度なストレスにより自律神経が乱れ、交感神経と副交感神経の切換えがうまく機能しなくなり、睡眠中の体温調節に影響がでてしまいひどい寝汗をかいてしまうことがあります。このような症状が出ている場合は、ストレスも軽度とは考えにくいので、一度専門の医療機関を受診することをお勧めします。
加齢によるホルモンバランス
加齢に伴ってホルモンバランスが乱れることがあります。これは更年期障害と言われ、女性だけでなく男性にも症状があらわれ、ちょっとしたことでイライラしたり、情緒不安定な状態になります。その症状の1つとして、昼間・夜間に汗をよくかくという症状があります。更年期障害が原因の場合は、症状に応じて専門医療機関を受診することをお勧めしています。
女性:婦人科、更年期外来
男性:前立腺疾患(泌尿器科)、うつ症状(心療内科・精神科)
原因・疾患を特定するために
上記に記載したように原因はいくつか考えられますが、日常生活からある程度ご自身で判断して原因となっている疾患などについてできるだけ早く改善するために医療機関を受診しましょう。
睡眠障害が疑われる方は、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を受けることをお勧めします。検査は耳鼻咽喉科や内科で対応している医療機関を事前にホームページなどで調べて来院するようにしてください。また、治療が必要になった場合は、通院が必要になりますのでなるべく通いやすい医療機関を選ぶようにしてください。
検査概要
医療機関で問診を受け、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあった場合、睡眠中の状況を把握するために自宅での簡易検査を行います。手指にパルスオキシメトリーを装着して無呼吸による低酸素状態を診断する検査と、鼻に呼吸センサーを装着して気流やいびきを計測する検査があります。本体装置は手首式血圧計を少し大きくした程度の大きさで、就寝中はマジックテープで手首に巻いたりして保持します。
【参考】
睡眠時無呼吸症候群の簡易検査だけでは判断できない患者様もいらっしゃいます。その場合には精密検査が必要となります。具体的には
簡易検査では結果をAHI(無呼吸低呼吸指数)で示します。これは睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を合計した数値です。その結果次第で、脳波や睡眠の質(深さ)などを検査する必要がある際に行われるのが精密検査PSG(ポリソムノグラフィー)検査です。
この検査には1泊の入院が必要です。とはいえ、検査機器を取り付けて眠るだけで、痛みもなく寝ている間に終了します。仕事終わりに入院し、翌朝の出勤前に退院できるよう配慮している医療機関もたくさんあります。
PSG検査では脳波、眼球運動(眼電図)、オトガイ(下あご)の動き(筋電図)を基本に、呼吸、心電図、血液中の酸素飽和度、前頸骨筋電図、いびきの音、睡眠時の姿勢・動きなどを同時に記録することで、睡眠深度や睡眠の経過、睡眠時異常行動、睡眠中の呼吸や循環の生理現象を総合的に調べることができます。当院でも専門医療機関と連携しております。
検査の結果について
睡眠時無呼吸症候群と診断された方は、治療が必要となります。
また、軽度な睡眠時無呼吸症候群だと診断された方には、症状が悪化しないようにするためにも下記のような改善内容をご説明します。
【中・長期的な取り組み方】
・適正体重にするように日常生活を改善する
・口呼吸になっている場合は、原因疾患治療する(例:蓄膿症、アレルギー性鼻炎など)
【短期的な取り組み方】
・飲酒する回数・量を減らす
・寝ているときの姿勢改善する
睡眠時無呼吸症候群ではないと診断された場合
上記に記載した悪性腫瘍、感染症、内分泌疾患が原因の可能性がある場合は、問診や簡易検査の結果をもとに、疾患を想定して各疾患が治療できる医療機関をご紹介しております。
寝汗をよくかく症状を改善するために
上記に記載したように、寝汗をよくかく方で原因が睡眠にあると感じる場合は、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を実施することをお勧めします。睡眠の問題は、患者様の生活の質(QOL)を低下させてしまうだけではなく、重症化すると交通事故や思わぬトラブルを引き起こしてしまう重大な原因につながってしまいます。睡眠が原因で思わぬ事故を引き起こしてしまった例も多数報告されておりますので、先延ばしにせずに原因特定して改善するようにしましょう。
また、寝汗の原因が重篤な病気の可能性もあります。早期に原因を特定するためにも症状にあった診療科を受診するようにしてください。