睡眠障害で昼間すぐに眠くなってしまう症状について当院にも多くの方がご相談にいらっしゃいます。患者様によって症状は様々ですが、ここでは、昼間にすぐに眠くなってしまう、日中眠くて集中できないなどの悩みのある方について、考えられる原因・疾患について、どのような検査・治療を行っていく必要があるか記載します。
考えられる原因・疾患について
睡眠時無呼吸症候群
昼間の眠気、日中眠い原因として最も多いと考えられるのが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時に無呼吸状態を繰り返す病気です。医学上は10秒以上の気流停止を無呼吸といい、一晩(7時間)の睡眠中に30回以上無呼吸が認められる場合、あるいは1時間に5回以上無呼吸がある場合に睡眠時無呼吸症候群としています。
睡眠中の出来事であるため自分で気がつくことは稀で、潜在患者数は300万人もいると推計されています。21世紀の国民病といわれることもあります。治療法が確立されているため、適切に検査・治療を行えば決して恐い病気ではありませんが、放っておくと高血圧や心臓循環障害、脳血管障害などにつながるリスクがあります。
当院でも昼間の眠気、日中眠い症状で悩まされている患者様の相談をお受けした場合には、問診を行い、自宅でできる簡易検査を実施して、睡眠時無呼吸症候群の診断を実施しております。
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ナルコレプシー、特発性仮眠症
ナルコレプシーとは、突然発作的に襲ってくる耐え難い眠気が日に数回もあり、勉強や仕事に支障をきたします。症状としては、非常に強い日中の眠気(睡眠発作)、情動脱力発作(カタプレキシー)※注、睡眠麻痺、金縛り、入眠時に幻覚をみる、などがあります。症状がひどい場合は、入眠に大して恐怖を感じてしまうこともあります。
※注
恐怖や恥じらい、イライラ、悲しい出来事、などによって過度に感情高揚するによって、突然、身体の力が抜けてしまう発作のことです。脱力発作の最も多い症状としては、
・突然、うなだれる(頸部)
・突然、だらりとした顔になる、舌を出してしまう(顔面)
・突然、眼瞼下垂(まぶたが下がる)
などがあります。
検査は、アクティグラフ、睡眠時ポリグラフ検査(PSG)、反復睡眠潜時検査(MSL)があります。
診断は、問診と検査結果から行われ、ナルコプレシー1型、2型、特発性仮眠症を分類し、治療を行います。
治療は、薬物療法となります。
反復性過睡症
睡眠障害としては稀な病気で、10歳代で発症することが多く報告されており、女性よりも男性の方に発症率が高いとされています。1年を通して1回以上(3ヶ月に1回程度)3日~5週間程度、強い眠気を起こし毎日16~20時間眠り続けてしまう病気です。
現在、この病気はまだ原因が明確になっておらず、治療方法も確立されておりません。過眠症の症状が始まってしまうと治療は難しくなってしまうため、過眠症の症状がでないように予防するための薬物療法を実施します。また、睡眠不足などが原因となり過眠症期になってしまうことがあるので、規則正しい生活を送ることが予防になります。症状は、期間が経過するにつれ自然に寛解する(症状が治まってくる)事が多いですが、寛解には長期間(平均で14年間程度と報告)かかるとされています。
うつ病
うつ病は、近年よく耳にする病気だと思います。うつ病を発症する患者様は増加傾向にあり、日常生活、仕事の環境などによっては誰にとっても注意が必要な病気だと認識されてきています。
うつ病の症状は、嫌なことや悲しいことで気分が沈んだり、落ち込んだりするという一時的なものではなく、言葉で表現できないくらい沈んだ気分になり、興味や喜びを感じなくなって、1日中ほぼ毎日その状態が続き、日常生活や仕事に向き合えなくなってしまう病気です。
【身体的な症状】
・睡眠障害(眠れない・すぐに眼が覚めてしまう)
・食欲がない
・疲労感、倦怠感がある
・動悸や息苦しさを感じる
【心情的な症状】
・不安、焦っている
・抑うつ気分
・興味や喜びを感じられない
・自分を責めてしまう
・会話や読んだ内容が頭に入ってこない
などが症状としてあります。治療は、個人差はありますが長期間かかります。専門の医療機関で治療を受けることをお勧めいたします。
PMS(月経前症候群)
PMS(月経前症候群)とは、月経前の3~10日の間、精神的・身体的に続く症状が現れ、月経が開始すると、軽快または消失する病気です。原因はまだ明確に解明されておりませんが、女性ホルモンの変動と関連があるとされています。
主な症状としては、
【身体的な症状】
・腹痛、頭痛、腰痛
・むくみ、お腹の張り、乳房の張り
・めまい
・倦怠感
・食欲不振もしくは過食
【精神的な症状】
・情緒不安定になる
・イライラしてしまう
・抑うつ気分になる
・不安を感じる
・眠気・集中力の低下、睡眠障害
などがあると言われております。
治療方法は、軽度な場合は日常生活の改善(食事療法)などを行い、必要に応じて薬物療法を行います。専門的に診断・治療を行う医療機関をご紹介するようにお勧めしています。
原因・疾患を特定するために
昼間の眠気、日中眠い原因を特定するために、最初に実施するのが、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査です。まずは睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を実施している医療機関を探します。主に耳鼻咽喉科医院や一部の内科医院で行っています。
検査概要
医療機関で問診を受け、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあった場合、睡眠中の状況を把握するために自宅での簡易検査を行います。手指にパルスオキシメトリーを装着して無呼吸による低酸素状態を診断する検査と、鼻に呼吸センサーを装着して気流やいびきを計測する検査があります。本体装置は手首式血圧計を少し大きくした程度の大きさで、就寝中はマジックテープで手首に巻いたりして保持します。
【参考】
睡眠時無呼吸症候群の簡易検査だけでは判断できない患者様もいらっしゃいます。その場合には精密検査が必要となります。具体的には
簡易検査では結果をAHI(無呼吸低呼吸指数)で示します。これは睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を合計した数値です。その結果次第で、脳波や睡眠の質(深さ)などを検査する必要がある際に行われるのが精密検査PSG(ポリソムノグラフィー)検査です。
この検査には1泊の入院が必要です。とはいえ、検査機器を取り付けて眠るだけで、痛みもなく寝ている間に終了します。仕事終わりに入院し、翌朝の出勤前に退院できるよう配慮している医療機関もたくさんあります。
PSG検査では脳波、眼球運動(眼電図)、オトガイ(下あご)の動き(筋電図)を基本に、呼吸、心電図、血液中の酸素飽和度、前頸骨筋電図、いびきの音、睡眠時の姿勢・動きなどを同時に記録することで、睡眠深度や睡眠の経過、睡眠時異常行動、睡眠中の呼吸や循環の生理現象を総合的に調べることができます。当院でも専門医療機関と連携しております。
検査の結果について
睡眠時無呼吸症候群と診断された方は、治療が必要となります。
また、軽度な睡眠時無呼吸症候群だと診断された方には、症状が悪化しないようにするためにも下記のような改善内容をご説明します。
【中・長期的な取り組み方】
・適正体重にするように日常生活を改善する
・口呼吸になっている場合は、原因疾患治療する(例:蓄膿症、アレルギー性鼻炎など)
【短期的な取り組み方】
・飲酒する回数・量を減らす
・寝ているときの姿勢改善する
睡眠時無呼吸症候群ではないと診断された場合
上記に記載したナルコレプシー、反復性過眠症、特発性過眠症、うつ病、PMS(月経前症候群)などが考えられる場合は、より詳しい検査が必要です。
当院では、問診と簡易検査の結果をもとに、疾患を想定して各疾患が治療できる医療機関をご紹介しております。
昼間の眠気、日中眠い症状を改善するために
上記に記載したように、昼間にすぐに眠くなってしまう、日中眠くて集中できないなどの悩みのある方は、まずは睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を実施することをお勧めします。睡眠の問題は、患者様の生活の質(QOL)を低下させてしまうだけではなく、重症化すると交通事故や思わぬトラブルを引き起こしてしまう重大な原因につながってしまいます。症状が徐々に進行していくために、気になってはいるものの、検査を受けるのを先延ばしにされていらっしゃる方も多いと思いますが、大きな問題が引き起こされる前に原因を特定して改善するようにしましょう。